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第31回《誕生日の朝に》R・ワーグナー:ジークフリート牧歌

夏の暑い日、来週のサマーコンサートの打ち合わせの為ベーリックホールへと行ってきました。外が暑いからか、建物の中は正に天国!穏やかな空気が体の芯まで染みてくるのを感じます。ちょっと部屋を覗くと「絵本フェスティバル」と題されたイベントが行われていて、物語からインスピレーションを得て飾られた美しい植物達がより一層心を癒してくれました。そんな風にゆっくりと洋館を見渡していると、ふと、ある話を思い出しました。140年以上前のある朝に起こったとてもロマンティックなサプライズです。今回はそれにまつわる曲R・ワーグナー作曲の『ジークフリート牧歌』をご紹介します。

 この曲は1870年、前年に長男ジークフリートが生まれた事と、この年にコジマと正式に結婚した事から、妻への愛と感謝の気持ちを込めて作曲されたものです。当時《指輪》を作曲中だったワーグナーは、ほとんど完成していたと言われる楽劇『ジークフリート』の中から動機を用いてこの曲を作りました。長い息で歌われるフレーズはどれも美しく幸せと希望に満ちています。また前奏が終わった後の主要主題の次に出てくるオーボエの素朴なメロディーは、コジマが愛していた古いドイツの子守唄「眠れ、幼な児よ、眠れ」から取られたもので、その後曲全体に可愛らしさを加えるスパイスになります。

…と、書いてみると、本当にどの旋律をとっても純朴で美しい曲なのだなと再認識します(笑)ですが、この曲のすごいところは初めて演奏された時のシチュエーションなのです。

 この曲が初演されたのはクリスマス12月25日の朝で、この日は妻コジマの誕生日でした。ワーグナワーはこの日の為に作曲し、密かに15人の演奏家を集めて練習をしました。そして誕生日の当日の早朝、別荘の螺旋階段に演奏者を並べ、寝ているコジマをサプライズの生演奏で起こすというなんともロマンティックな演出で初演を果たしました。さすがワーグナーと言うか、まず思いつく事が凄いですね(笑)そんな裏話を知ってから改めてこの曲を聴くと、ワーグナーがどれだけ奥さんの事を思っていたのか、ひしひしと伝わります。

 横浜は山手の洋館にいいてみると、そんなロマンティックな情景も想像できちゃいます。(螺旋階段はありませんがw)二回続けて誕生日ネタになってしまいましたが・・・・皆さんもちょっとお時間があるときにでも、山手の洋館めぐりは如何ですか?サマーコンサート、ぜひお越しください!(笑)

2017年7月

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