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第34回《傑作の森ってどんな森?》L・V・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番

大きな音楽祭が終わりほっと一息つく時間。12月の本番ラッシュに向けて練習をしなければいけないのですが、少しブレイクを挟むのも必要かな?と自分を甘やかし馴染みの珈琲店に行ってきました。そこで久しぶりに聴いたのがベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番ト長調作品58でした。

 この曲は大学2年の時に勉強した思い出の曲。苦い思い出もありますが(笑)今でも好きな曲です。曲の魅力を語りだしたらきりがありませんが、今回はまず、私が大学2年生19歳の時に(10年以上前?)この曲を演奏する後輩のために書いたプログラムノートを、そのまま載せようと思います。恥を承知で、です(笑)!

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 ルートヴッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)は、少年時代の習作、未完に終わった第6番、自作のヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲を除いて、全部で5曲のピアノ協奏曲を書き残している。それらの作品はどれも素晴らしく、モーツアルトの諸名作の流れを受け継いでいて、古典派協奏曲を集大成し、ロマン派協奏曲を導く充実した作品群である。そんな傑作揃いのなかにあって、最も美しく、最も深い内容を持つこの第4協奏曲は、ロマン・ロランが「傑作の森」と呼んだ、ベートーヴェン壮年期の1806年に完成された作品である。
 曲は、1807年3月にロヴコヴィッツ候の邸宅で催された演奏会で非公開の初演が行われた後、1808年の12月22日にアン・デア・ウイーン劇場で公開の初演がされており、このとき、この曲は第5,第6交響曲と、《合唱幻想曲》を含む長大なプログラムの一部であった。この事からも、この時期が作曲者にとってどれだけ充実していたかをみてとることができる。(どちらも作曲者自身の独奏で行われた。)しかし、初演は成に至らず、長いあいだ演奏の機会を失い、作曲者が世を去って9年後の1836年にメンデルスゾーンにより蘇演されるまで、真価をまたなければならなかった。

 さて、このピアノ協奏曲第4番で、最大の特徴であり最も注目すべきは、曲の冒頭でいきなりピアノが独奏で第一主題を提示するという曲の始め方であろう。それは、オーケストラにより主題が提示され、その後独奏楽器が登場するという古典的な協奏曲の形を打ち破る、当時としては画期的な試みであった。
 そのような序奏から始まる第1楽章は、終始ピアノが軽やかなパッセージを響かせつつ、主題の同音連打での動機が楽章全体を支配している。(この書法は《熱情》ソナタや第5交響曲にもつかわれている。)この動機を元に拡がりを続けていき、再現部で一つの頂点を築く。カデンツァは作曲者自身が書き残したもので、100小節と比較的長めであるが、良くまとまっていて、実際によく演奏されるカデンツァである。この長大なカデンツァの後は、25小節のコーダが置かれており、その中で再び拡がりを見せ、最後は5オクターブに及ぶ劇的な和音で終わる。
 それに続く、わずか72小節しかない第2楽章は、ピアノと弦楽器による「対話」が深い味わいを作り出している。次第に弦とピアノの間隔が狭まっていき、嘆きの歌とも言える切ないピアノの旋律があらわれる。トリルをきっかけに、悲しみにあふれた盛り上がりを見せた後、再び精神的な美しさが戻ってくる。この楽章の主調であるホ短調で完全終止し、ピアノのささやくような音のなかから、オーケストラは切れ目なく第3楽章を始める。2楽章とはうってかわり、終始軽やかで明るいこの楽章では、トランペットとティンパニが初めて登場する。生き生きした中にも優美さを失わないロンド・フィナーレで、カデンツァは、オクターブとアルペジョによるトッカータ風に書かれている。最後は、分散和音の拡がりを効果的に使い、1楽章同様、5オクターブの和音でドラマティックに全曲を締める。
 
 この作品の持つ叙情性、深々とした豊かな感情の広がりや緻密で磨き抜かれた旋律美は、同じ時期に作曲された交響曲第4番やヴァイオリン協奏曲同様、当時進んでいた未亡人ヨゼフィーネ・ブルンズウィックとの恋愛関係も曲の性格と無関係ではないかもしれない。
 技巧的には極めて難曲であるが、聴き手に全くそれを感じさせない内面的でロマンティックな繊細さを、弟子であったチェルニーは「演奏中の打鍵は見事に静寂で、気品に溢れ、美しく、常に平然としたものだった」と語っている。

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・・・読み直してみると恥ずかしいですね(汗)言いたいことが沢山あって抑えられないというか・・・暑苦しいというか笑

 さて、ここで今回のコラムのタイトルにした『傑作の森』についてお話ししたいと思います。プログラムノート中には〔ロマン・ロランが「傑作の森」と呼んだ、ベートーヴェン壮年期の1806年に…〕と書いてありますが、なぜこう呼んだのか?ここに言われる壮年期というのは、おそらく1802年にハイリゲンシュタットの遺書を書いた後、どん底から見事復活を遂げた1804年からの10年間を指しています。この時期に書かれた作品が本当にすごいのです!作品番号みると

 53ピアノソナタ21番『ワルトシュタイン』
 54ピアノソナタ22番
 55交響曲3番『英雄』
 56トリプルコンチェルト
 57ピアノソナタ23番『熱情』
 58ピアノ協奏曲4番
 59弦楽四重奏7•8•9番『ラズモフスキーセット』
 60交響曲4番
 61ヴァイオリン協奏曲
 62序曲『コリオラン』
 
 などなど、他にも67・68で交響曲の5番『運命』6番『田園』等とにかく傑作が揃っています。音楽ファンがこれだけのラインナップを見れば、ロマン・ロランが「傑作の森」と言ったのも納得せざるを得ません。是非みなさんも聴いていてください!抑えきれないエネルギーを感じることが出来ると思います。まずはピアノ協奏曲の4番から?(笑)

2017年11月22日

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