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第9回《胸打つ待ち時間》ブルックナー:交響曲第7番より 第2楽章Adagio

 あけましておめでとうございます。2016年も始まってもう1ヶ月が過ぎようとしています。12分の1が終わるなんて…本当に月日が過ぎるのが早いですね。これから年度末に向かってもう一つの師走が始まった感じですが、勢いで進んで行こうと思います。
さて、今日はちゃっちゃと仕事を切り上げ、そのまま電車で友人宅のある鎌倉の長谷へ。17時半から話し込み気付けば22時を過ぎてしまいました。長居を詫びて駅へと歩いて行くと目の前で電車がいってしまい(この時間の江ノ電は本数が少ない)暗いホームで電車を待つことに。駅員さん以外は自分しかいない、そんな特別な空間で聴きたくなる曲がこのアダージョです。

 ブルックナーという作曲家は特に好きな作曲家です。ミサ、テディウム、11ある交響曲e. t.c 。特に2〜9番の交響曲はどれを聴いても一貫した魅力を感じます。それは「孤独感」です。彼の作品全体に漂う極上の孤独感がたまりません。(笑)そして、その中でも胸を締め付けられるような美しさを持つのがこの7番のアダージョだと思います。

 7番の2楽章は、アダージョを得意とするブルックナーの中で最もポピュラーな作品ですが、ただの「綺麗な緩徐楽章」ではありません。美しい旋律であれば6番や2番などがあるし、曲全体としては5番の構築美が最も魅力を感じます。ですがこの楽章にはそんな美しさだけではない胸を打つ特別な孤独感が存在するのです。
曲冒頭からワーグナーテューバの荘厳な響きからひたすら暗闇に浸されます。直後に現れる弦楽器が飾り気のない長調(明るい響き)でシンプルな旋律を奏でますが、その希望もすぐに挫折へと変わります。そこから浮き上がる美しい旋律や和声的な反復進行も、自然な流れで人工的な構えは一切見られません。行き着くクライマックスは、これもまた明快なハ長調、ここでは4楽章全てを通して唯一のシンバルが鳴らされます。(ハース版以外)ワーグナーの死去を知ってから付け加えたコーダは孤独の極み。曲の最後に現れる長調でさえ、その悲劇的性格を消すことは出来ません。
長調の音色は短調より明るいと言われますが、この楽章においてどこまでそれが通用するかどうか?それは極めて限られた範囲であると僕は思います。

 そんな音楽がとても似合う夜の江ノ電。普段は苦痛に感じる電車の待ち時間でさえ、味わい深いものになります。

 今年もこんな感じで、場面・空気にあった作品、或いはどうしても紹介したい作品について、定期的に更新していきたいと思います。拙い文章力ではありますが、お付き合い頂ければ幸いです。本年も宜しくお願い致します。

2016年1月26日(夜)

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