第15回《5小節の魅力》J・ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲Op56
今日は午後の予定が何もなかったので、車を飛ばして千葉まで行ってきました。快晴とまでは行かないものの、まずまずの天気の中アクアラインを走って木更津へ。途中久しぶりに海ほたるに寄り道をして東京湾を満喫しつつ、ドライブを楽しんできました。そんなドライブをしていると、子供の頃に車で聞いていた音楽(これが僕の原点)を思い出します。
小さい頃、家族で車に乗ると母が運転、父は助手席でカーオーディオのカセットテープを入れ替えるといった役割分担が決まっていて、それを眺める自分は父が流してくれる曲を音痴に歌って邪魔をしていた記憶があります。そこに流してくれる曲はベートーヴェンの第9だったりメンデルスゾーンのスコットランドだったりショパンのコンチェルトだったり・・・たまにキースやチックなどのジャズピアノや母の趣味の洋楽も流れていましたが、大体が父の権限によりクラシック音楽であり、そのころ、いわゆる大堂と言われる作品を沢山聞かされていたと思います。その中でも最も頻繁に聞いていたのがブラームスでした。主に4曲のシンフォニーがメインでしたが、自分が一番好きだったのは、『ハイドンの主題による変奏曲』で、誰が作ったか、ハイドンがなんなのか、バリエーションの意味もわからず「ハイドンバリエーションが聴きたい!」と言っていた覚えがあります。(これが第1回のコラムで書いたブラームスが好きになった理由です。笑)今日はこの「ハイバリ」(今風に言ってみました。笑)を紹介したいと思います。
ハイドンのコラール(元は古い巡礼歌)にテキストをとった『ハイドンの主題による変奏曲』は、明朗で素朴な美しさが魅力的な作品ですが、兎に角緻密で精巧にできた傑作です。まずはテーマ。そもそも10小節(5+5)といった、決してノーマルではない主題に美しさを見出すブラームスのセンス。そして木管を中心としたオーケストレーションが生む懐かしさ。魅力的です!
そして、その主題から作り出される多彩で起伏に富んだ音楽と緻密な構築美は、まるで巨大な建造物を思わせます。
更に8つのバリエーションを経て最後を締めくくるフィナーレは、それ自体で一つの変奏曲になっていて、低音に聴こえる5小節のカントゥスフィルムス(定旋律)を土台にドラマティックな変奏を展開していきます。そして、最後は冒頭の主題を壮大なサウンドで再現して全曲を締めくくります。
兎に角聞いてみてほしいです。バリエーション一つ一つの味、そして全曲を通して見えてくる立体感を楽しんで貰いたいと思います。(2014年のラムネーズ公演で渡部と2台ピアノ版をやりましたが、ピアノ版も中々魅力的です。)
あの頃車でなんども聞いた「ハイバリ」。大人になり曲のバックグラウンドを理解して更に好きになった「ハイバリ」。この曲は車で聴くのが一番好きです(笑)
6月4日(土)