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第22回《にわかワグネリアン》R・ワーグナー:舞台神聖祝典劇『パルジファル』

 今年ももう師走。音楽業界では秋口から年末にかけて繁忙期を迎えます。イベントが目白押しで、「クリスマスコンサート」と題された模様しものは数知れず。自分自身、本当のクリスマスが来る頃には既に一山超えた気分でした(笑)そしてオーケストラのコンサート予定を見るとベートーヴェンの交響曲第9番《合唱付》(いわゆるダイク)が並んでいて、これを見ると「今年も終わるな」と感じてしまいます。なぜ年末に第九をやるのかは追々お話するとして・・・
 
 さて、世間では「年末と言えば第九!」と言う潮流がありますが、僕にとっての「年末と言えば?」はワーグナーです。毎年年末になると某FM局でその年のバイロイト音楽祭の録音を連日放送してくれます。バイロイト音楽祭はワーグナーが作ったバイロイト祝祭劇場でワーグナーの作品のみを上演する世界的な音楽祭です。毎年7月から8月に行われ、今年で140年目を迎えます。この模様が毎年末放送される訳です。子供の頃この時期になると夜中までラジカセの前にへばり付き、テープで放送を録音していました。曲が長い為丁度いいタイミングでテープをひっくり返さなければならず、緊張しながら待っていたのを覚えています。その影響もあってか、親父にねだり誕生日プレゼントで初めて見に行ったオペラもワーグナーの舞台神聖祝典劇『パルジファル』でした。東京文化のロビーを中学生のガキンチョがドレスアップした大人の中を一人でうろついている光景は、今思えばかなり滑稽だったのだろうと思います。(笑)と言う事で今回ご紹介する曲は『パルジファル』です。 
      
 題材はキリストの贖罪前の最後の晩餐をもじったパロディーですが、「キリスト」や「イエス」と言った後は台本には全く出てきません。伝承される物も、最後の晩餐で制定されたパンやぶどう酒よりも、聖杯と聖槍(キリストを刺した槍と、その血を受けた杯)になっていて、物語の中で絶えず熱烈に偶像的に賛美されています。又、主人公のパルジファルは作曲者であるワーグナーとは180度違った純粋な若者で、彼自身には不可能だった性愛の否定をする者として書かれています。完全なる純粋さを持つパルジファルは、晩年のワーグナーの憧れる人間像だったのかもしれません。

 この曲の魅力は何と言っても声楽と管弦楽が渾然一体となった美しいサウンドです。それは、この作品の作曲過程が先にオーケストラ部分を作曲した後に声楽パートを作曲した故だと思います。「歌」ではなく「言葉」に重点が置かれ、淡々と流れ続ける音楽の上で音の強弱ではない力強さを感じさせます。それでいて調性の不安定さ(明るいのか暗いのか?)からくる繊細な魅力も加わり、より一層言葉を引き立てます。
 僕が特に好きなシーンは、第1幕最後の聖堂のシーンへの転換場面から幕が降りるまで。オーケストラだけで演奏される場面転換の音楽は、晩年のワーグナーならではで荘厳かつ雄弁な響きを生み出し、後に現れる騎士団の合唱の神秘性は、音楽だけでその場面が他の世界とは違う事を感じられます。素敵な曲です。長いですが・・・(笑)是非一度この魅惑的な音楽を聴いてみて下さい。

 もう2016年が終わろうとしています。あっと言う間の一年でした。少しでも前に進めたかなぁと恐々今年を振り返りつつ・・・、ワーグナーを聞きながら来年への抱負を何となく考えています。(笑)2017年も宜しくお願い致します。
 
2016年12月27日(火)

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