第28回《五月空》J・S・バッハ:フルートとチェンバロのためのソナタ ロ短調 BWV1030
ここ数年、五月のこの時期は京都や滋賀にいる事が多いのですが、今年も琵琶湖までやってきました。今回は一泊の弾丸で殆ど観光はできなかったので、二日目の午前中だけ時間を作り、初めて琵琶湖博物館に行ってみました。琵琶湖の歴史や琵琶湖に生息する生き物の展示など、かなり面白い内容でとても楽しめました。館内にあるレストランで食べたブラックバスとフナの天丼も思いの外美味で驚きでした。(笑)そんなGW後半・・・。
湖西線の車窓から曇り空の琵琶湖を眺めながら聴いていた曲が風景にとても合っていたので、その曲について書きたいと思います。J・S・バッハ:フルートとチェンバロのためのソナタ ロ短調 BWV1030です。
バッハは、フルートの為のソナタを7曲残しています。内訳は、フルートとチェンバロの為のソナタが3曲、フルートと通奏低音(オブリガートチェンバロ)の為のソナタが3曲、無伴奏フルートの為のパルティータが1曲の計7曲ですが、(その内3曲は偽作の疑いがかけられていますが・・・)その中でも個人的に一番好きなのが、このフルートとチェンバロの為のソナタ ロ短調 BWV1030です。
フルートと言っても作曲された当時はまだ、木製による横笛フラウトトラベルソと言う古楽器で演奏するもので、今の銀や金などで作られる楽器とは音量や響きが全く違うものでした。(今の形になったのはフランス革命以降)ですがそんな時代・楽器の為の作品でありながら、スケールの大きさは後の時代のそれと比較しても全く劣りません。
というのも、この作品は三声のトリオの形で出来ていて、①フルートソロ、②チェンバロの右手、③チェンバロの左手、と言う独立したラインを持っています。なので、そのラインが絡まり解け複雑な関係を持ちながら、大きな広がりを作っていくのです。さらにそれが対位法的(フーガやカノン、追いかけっこをするような作曲技法)に絡んでいき、なんとも言えない味わいを生み出します。また、半音階を駆使した陰影に富む旋律の美しさも凄く魅力的で、吸引力を持っています。
そして、何より凄いと感じるのが、この時代一般的であった「ソロと伴奏」と言うスタイルのソナタではなく、フルートとチェンバロの各旋律が対等に扱われ、それでいて一つのアンサンブルにまとめ上げられているところ。これは正に古典派以降主流になる「〇〇とピアノのためのソナタ」という室内楽としてのソナタのあり方を先駆けと言っても過言では無いと・・・・僕は思います。
と、色々語ってしまいましたが(笑)シンプルに楽器の音色、トラベルソの柔らかく繊細な響きを楽しんでみて下さい。きっと、どんよりとした五月空に鮮やかな色を足してくれるはずです。
2017年5月6日(土)