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第32回《8月15日に思うこと》R・シュトラウス:メタモルフォーゼ(変容)

厳しい暑さに夏バテ気味な8月の半ば、特に食欲に影響はありませんが
冷汁や冷やし中華、冷しゃぶ、などなど(笑)冷たいものが食べたくなる傾向が僕にはあります。そんな中、毎年やってくる終戦の日。テレビで放送される式典の様子やドキュメンタリー、最近では昔のフィルム映像をカラーに再編したものを見ることも増えました。子供の頃祖父母から聞いた話・今までに読んだものを思い出して、街の喧騒を忘れたくなるそんな時 いつも聴く音楽があります。それがR・シュトラウス作曲の『メタモルフォーゼ』です。

 僕がこの曲を初めて聞いたのは恐らく小学校高学年の頃で、父が持っていたCD(死と浄化とのカップリングのそれです笑)のジャケットの格好良さから聴くようになりました。曲の冒頭から一気に引き込まれたのを覚えています。曲のテーマは「追悼」であるはずなのに、その美しさにのめり込み、気付くと幾つもの音の波に囲まれている様な不思議な響きの中にいて、子供ながら「なんだろうコレは?」と思いました。そしてそれ以来、特に音楽に没頭したい時(無になりたい時)にこの曲を聴く様になりました。

 実は、この曲の題名はもう少し長く、正確に書くと【23の独奏弦楽器の為の習作「メタモルフォーゼン」】となります。楽器編成を見ると弦楽5部でヴァイオリン10・ヴィオラ5・チェロ5・コントラバス3といった具合で普通の弦楽合奏なのですが、実は5つのパートに分かれているのでは無く、奏者一人一人が独立したパートを演奏するというもので、つまりは23の旋律が複雑に絡み合って曲が出来ている訳です。それが音の渦となって聴き手を引き込んでいくのかもしれません。

 因みに、この曲が作られたのはナチスドイツ崩壊直前の1945年3月13日から4月12日の1ヶ月の間。シュトラウスはすでに80歳にも達していましたが、年齢や創作意欲の衰えは全く感じられず、むしろ表現意欲にあふれています。曲中では、「戦争の最後の数ヶ月の悲しみ」「ドイツの都市や農村や劇場や、戦争で崩れた取り返しのつかないものについての悲しみ」が表現されていますが、コンセプトにある重苦しさや悲壮感とは次元の違う美しさを感じます。

 曲の最後の9小節「非常にゆっくり」の部分には IN MEMORIAM という書き込みがあります。そこではベートーヴェンの第3交響曲の第2楽章〈葬送行進曲〉のメロディーが引用されており、シュトラウスの追悼の意が表現されているわけですね。

 正に8月15日の今日、聴くに相応しい音楽ではないでしょうか?夏のジリジリとした暑さはまだまだ続きそうですね。

2017年8月15日

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