第33回《人の性格を音楽で》E・エルガー:『エニグマ変奏曲』作品36
今年の10月は何だか雨ばかり。もう直ぐ秋なはずなのに梅雨が戻ってきたかのような毎日どんよりとした曇り空。この状態で晴れやかな気持ちになるのは流石に難しいのではないでしょうか?そんなある日の学校の休み時間の出来事です。
外で遊べない子供達が数名音楽室に遊びに来ることがありました。児童たちはピアノを弾いて遊び、自分がそれにコメントをしていると矛先が突然僕に向きました。「何か弾いて」と言われてクラシックの曲を弾き始めると「もっと違う曲がいい」と言われ、こちらが「例えばどんな曲?」と聞くとその子は「私みたいな曲」と言いました。そこでその子っぽい和音と適当な旋律をワンフレーズ弾いてあげると、これが案外面白く(ちょっとおふざけも入っていましたが)暫くこのネタで楽しい時間を過ごすことができました。そんな遊びをしながら、ふと「クラシックにもそんな曲があったなあ」と思い出したのがE・エルガーの『エニグマ変奏曲』作品36でした。
この曲は、あの『威風堂々第1番』や『愛の挨拶』で有名なエルガーが、19世紀が幕を下ろそうとしていた1899年に完成させたオーケストラのための作品で、彼の代表作としてだけではなく、この時代のイギリス音楽をも代表する名作と言われています。哀愁漂う美しいメロディーと、それをもとに書かれた様々なキャラクターを持つ14の変奏で出来ているのですが、これが聴いていてとても楽しい音楽なのです(笑)。というのもこのそれぞれの変奏は、エルガーが友達の性格を音楽で表現したものだからです。
エルガーはこの曲が完成する前年の1898年1月に認めた友人の手紙の中には次のような言葉が残っています。
「私はオリジナルな主題に基づく変奏曲をスケッチしました。この変奏曲は私を楽しませました。というのは特定の友人たちのニックネームをそれぞれの変奏に付けたからです。つまり各々の変奏がその人のムードを表すように書いたのです」
そう、つまり同じメロディーを基にして、友人たちのキャラクターを音楽で表したのがこの『エニグマ変奏曲』なのです。そう言った経緯を知ってからこの曲を聴くと、「この変奏に書かれた人はせっかちだったのかな?おっちょこちょいだったのかな?」など色々と想像ができて、また違った聴き方ができるのではないでしょうか?因みにオススメはやはり第9変奏のニムロット!深い愛情を感じる美曲です!是非聴いてみてください。(どんな人だったのかなぁ?)
子供たちに「先生の曲を弾いて?」と言われ、明るく穏やかな和音を弾いてみせると、「先生はもっと暗いでしょう?笑」といじられてしまいました(汗)自分そんなに暗くないんだけどなぁ・・・・・・
2017年10月23日