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第37回《「死に絶えるように」の指示がある曲》G・マーラー: 交響曲第9番

あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
と言う事で今年も年始は西で過ごし、二日にこちらへ戻ってきましたが、今回は大変でした。姫路から乗り換えるはずの新幹線が遅延で遅れに遅れ、結局移動に8時間ぐらいかかりました。元の電車を待っていた終電がなくなってしまうので、ギュウギュウのデッキに立ちっぱなしで横浜まで帰ってきました
と言うことで今日はこんな長い移動時間を過ごすのにピッタリな曲をご紹介します。(笑)心を落ち着かせてくれて、しかも演奏時間が長い!個人的にはこの作曲家では一番好きな曲です。マーラーの交響曲 第9番 二短調です

 マーラーの交響曲は色々な意味で壮大です。「色々な意味」を説明していくと少し難しい話も入ってくるので、ここでは単純に「曲の規模(内容や演奏時間)」の長さについてフォーカスしたいと思います。
 マーラー作品の中で最も長いのは第3交響曲(全6楽章100分近く)ですが、この9番もなかなかな長さがあります(全4楽章、約85分)。ですがこの9番を聴いていると、時間の感覚として然程長く感じずに聴くことができます。つまり持ちこたえる事が出来るのです(笑)。
 
 その要因は、純粋な多声音楽が全ての楽章を支配していることにあると思います。それがある種の厳しさをもたらし曲に緊張感と吸引力を生み出すのです。例えば同じメロディーが出てきても、聴こえて来る響き空気が違います。聴いていてドキドキします。
 そして、もう一つの要因は調性感を極限まで拡大させたことです。一つフレーズの中で幾つもの調を経由します。こういった所がグット来るポイントですね。終楽章など何回聴いても目頭が熱くなります。
 
 1楽章の夢想的な世界観、2楽章のお洒落なレントラー、3楽章のスケルツオは快活さの中に突如現れる滑らかなメロディーは格別です。そして何と言っても第4楽章。終楽章にアダージョと言うのも珍しいですが、その天にも昇るような美しさは、マーラー随一だと思っています。因みにこの曲の最後の小節にはersterbend(死に絶えるように)という言葉が添えられていますが、まさに曲全体を支配する「死」というテーマ性を裏付けています。常に死を身近に感じていたマーラーですが、終末を前に、正に「集大成」と言える作品である事は揺るぎないでしょう。是非みなさん一度聴いてみてください。演奏時間は長いですが、聴き流しているだけでもきっと自然に耳が傾く瞬間があるはずです。それだけ魅力的な旋律が沢山出てきますので。(笑)

 因みにこの時は、9番の前に大地の歌も聴いていましたが、目的地には全然着きませんでした。そんなこんなで、今年も一年よろしくお願い致します。 

2018 1月3日

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